2022.10.16

「開発協力大綱」改定のプロセスに関する提案

外務省は9月9日、「開発協力大綱の改定方針」を発表し、「開発協力大綱改定に関する有識者懇談会」(以下「懇談会」)を中心に改定作業を行うことを発表しました。

参照:何のための「開発協力大綱」の改定なのか

しかし「懇談会」の有識者8名中、市民社会側からは1名のみが選出され、その運営のあり方をめぐって、N GO ・外務省定期協議会 ODA 政策協議会および連携推進委員会は懸念を表明しています。

今回は、その改善の提案を行う声明です。是非ご一読いただき、他団体への情報の共有や、外務省に対して、適宜、働きかけをよろしくお願いします。

声明のPDF版

2022年10月8日

外務大臣 林 芳正 様

開発協力大綱改定に関する有識者懇談会 座長 中西 寛 様

NGO・外務省定期協議会

ODA 政策協議会コーディネイター一同 連携推進委員会委員一同

「開発協力大綱」改定のプロセスに関する提案

時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

さて、NGO・外務省定期協議会 ODA 政策協議会および連携推進委員会は、今次の「開発協力大綱」改定に際し、「開発協力大綱改定に関する有識者懇談会」(以下「懇談会」とする。)に構成員一名を選出いたしました。これまでの間に懇談会は 2 回(第 1 回が 9 月 16 日、第 2 回が 9 月 30 日)開催されましたが、その運営の在り方について、構成員を推薦した立場から、懸念を表明し、提案を行うものです。

1.懇談会の各会合についての透明性・公開性の確保

10 月 8 日までの間に、懇談会は 2 回開催され、各回について報道発表が、また、第 1 回会合については議事要旨が外務省のウェブ上で公開されています。議事要旨は合計 3 ページ、発言者の記名がなく、討議内容が箇条書きにまとめられた簡素なものです。また、会合には少なくとも構成員側から、討議に供するための資料が提出されたと認識していますが、これら資料については公開されていません。

これでは、懇談会の各回において、何をベースにどのような討議を行い、どのような結論に至ったのかについて、把握することができません。実際、「懇談会」でどのような議論が行われたのか、公開された資料を見てもわからない、という声を、多くの関係者から聞いています。懇談会に構成員を推薦した立場として、懇談会で行われた討議について、透明性・公開性を高めていただくよう、以下要望いたします。

(1) 懇談会の議事録については、発言者氏名を記名し、逐語で作成するなど、できるだけ高いレベルの透明性・公開性を持たせてください。これが難しい場合には、討議の論点や流れ、結論が分かるように、より詳細な議事要旨を作成してください。

(2) 懇談会の各会合において、討議に供するために政府や構成員が提出した資料については、原則、会議後に公開するようにしてください。

上記は、政府の審議会や懇談会等で一般的に行われている方法です。開発協力大綱は、過去の例に倣えば、今後8~12 年の間における開発協力の在り方を規定するハイレベルな文書であり、その影響は開発協力に関わる全てのステークホルダー、さらには国内外の多くの人々に及ぶことから、改定にあたっては、最大限の透明性・公開性を確保するようにお願いいたします。

2.懇談会の構成、プロセスについて

本懇談会においては、NGO・市民社会から任命される構成員の人数は 1 名に限定されています。また、懇談会の開催も合計 4 回、わずか 2 カ月強の期間となっています。

NGO・市民社会は、途上国現地における様々な分野のプロジェクト等の実施から、開発協力の全体また分野別の政策提言、国際機関のガバナンスや各種国際会議、政策決定プロセスへの参画、開発協力に関する市民レベルでの理解促進など、多様な活動を行っております。こうした多様性を踏まえて、市民社会の意見を大綱改定に反映するうえで、構成員1 名では大きな限界があります。また、わずか4 回の開催では、開発協力が守り、準拠すべき理念や原則から、現代世界における日本の開発協力の性格付け、国家安全保障や外交政策との関係や整合性、さらには、幅広い市民層における理解の促進など、多岐に渡るテーマをカバーできません。さらには、開発協力に関わる多様なステークホルダーや、なによりも、改定によって影響を受ける、開発協力の対象国の市民やその他のステークホルダーの意見を聴取し、それを踏まえた提言を作成することもできません。結果として、改定「開発協力大綱」が、市民社会の意見を十分踏まえたものとなるのか、また、現代において本来検討しなければならない多様な課題をカバーした内容となるのか、強く懸念せざるを得ません。

つきましては、今次の開発協力大綱改定に向けた懇談会の提言をよりよいものとするため、また、次回の開発協力大綱改定プロセスに今回の教訓を生かすため、以下提案いたします。

(1) 懇談会の構成員のうち、NGO・市民社会から任命する構成員については、少なくとも 2 名以上としてください。また、その任命に当たっては、市民社会が有する既存のネットワークからの推薦を受け、これを尊重して任命するものとしてください。

(2) 懇談会による提言の第 1 ドラフトについては、構成員が修正・加筆等を行える期間を十分に確保してください。また、各構成員が行う加筆・修正・削除等の提案については、抜本的なものも含めてこれを受理したうえ、必要に応じて、5 回目以降の会合を開催するなどを含め、『4 回』という規定の回数にとらわれず、柔軟に対応してください。

(3) 開発協力大綱の改定によって影響を被る、開発協力に関わる各種のステークホルダーや、日本の開発協力の対象となる国々の市民をはじめ、相手国のステークホルダーからの意見の聴取や対話などの機会を積極的に持って行くものとしてください。

以上