2022.05.31

004 日本政府は民主主義の担い手? 市民社会パートナーが意見

2022年5月25日、最高裁判所大法廷で画期的な判断が示された。

「海外に居住する日本国籍を持つ人が、衆議院選挙と同時に行われる最高裁判官の国民審査に参加できない状態を生み出している『国民審査法』は憲法違反である」というものだ。

最高裁判所裁判官を罷免するかどうかについて投票する国民審査権は、選挙権と同様、国民に平等に保障された権利である、と明示された。

報道によれば、ある法令が憲法に違反していると最高裁が判断したのは、戦後11件のみであり、国会が法整備を怠った「立法不作為」による賠償を認めたのは2件目である。

このように、憲法や法律が制定されていても、国の機関や政治家によってそれらが守られていないことを「法の支配が機能していない状態」と呼ぶ。

「法の支配」は、民主的な統治、人権保護、政治参加、情報公開などと同様、民主主義を構成する重要な要素だ。日本政府は民主主義国家を標榜し、各種取り組みを国内外で進めているが、残念ながら市民社会の視点からはいくつもの不備が見受けられる。

この5月、日本政府も運営評議会として参加する多国間機関「民主主義共同体(Community of Democracies、以下CoD)」の市民社会パートナーより、「日本政府が運営評議会の資格を更新するにあたり、市民社会の意見を聞きたい」という打診があった。

JANICはCoD市民社会パートナーの日本の窓口を務めており、国内外での民主主義の推進を後押ししてきた。JANICからの呼びかけに応じ、市民社会スペースNGOアクションネットワーク(NANCiS)、ヒューマンライツ・ナウ、日本国際交流センター(JCIE)、Voice Up Japanなどの団体から、5つの分野(*)における日本政府の取り組みについて意見が寄せられ、CoD市民社会パートナーとのラウンドテーブルも開催された。

「政治参加」分野では、

・議員のジェンダーバランスが諸外国と比べて著しく偏っていること

・特に女性議員は10%前後で推移しており、多様な人々の意見が議会に反映されにくい状態になっていること

・議員の平均年齢が60歳前後であるのに対し、39歳以下の立候補者は全体の5%に過ぎないこと

・若者や女性の立候補を妨げている要因として固定的なジェンダー役割の当然視や不当に高額な供託金制度があること

――などが指摘された。永住権を持つ在日韓国・朝鮮人の参政権がいまだに認められていないことや、在住外国人は住民投票権を持たないなど、政治参加を阻む現実もある。

また、「法の支配」分野では、

・逮捕された被疑者が最大23日間も警察の留置所に拘禁されるという「代用監獄」と呼ばれる日本独特の制度の問題点

・精神障害・精神疾患を持つ人々など個人の自由が恣意的に制限される事例

――などが挙げられた。

「表現の自由」分野では、

・多くの市民社会による反対や懸念の声を押し切った特定秘密保護法の成立

・在住外国人や人権活動家などの社会的マイノリティに対する攻撃により、人々が情報にアクセスしたり、自由に意見を表明したりする機会が損なわれている状態への懸念

――などが表明された。

日本の市民社会による報告書は、CoD市民社会パートナーを通して運営評議会および日本政府にも届けられ、日本政府の資格更新を検討する参考資料として活用される。世界中で「民主主義の危機」と言われている今日、日本政府が引き続き運営評議会メンバーとして参加することは、国内外の民主主義の発展、持続可能な開発目標(SDGs)の達成のためにも極めて重要である。今回の市民社会による提言を受け、日本政府には改善策を講じるとともに、引き続きCoD運営評議会としてその役割を果たしてほしい。

*5つの分野は以下の通り。

・民主的ガバナンス(Democratic Governance)

・表現の自由(Freedom of Expression)

・政治参加(Political Participation)

・人権の保護と推進(Protection and Promotion of Human Rights)

・法の支配(Rule of Law)