2022.12.05

031 国際協力NGOの魅力を伝えるためには

私は20年間にわたりJANICで活動を続けているため、日本のNGOセクターの移り変わりを体験してきました。20年前と比べ、NGOセクターは収入規模が拡大し、外務省、JICAなどの政府からの支援は増え、企業、労働組合、大学など他のセクターとの連携も進みました。

他方で、JANICが作成した「NGOデータブック 2021」(注1)によると、NGOの設立団体数は近年、減少傾向にあります。また、財政規模が年間1億円以上の団体は限られており、中規模以上のNGOもあまり育っていません。NGOの財政規模の平均値は1億9,656万円ですが、中央値は年間2,300万円と、大きくかけ離れています。

日本におけるNGOセクター全体としての成長の歩みは遅く、しかも国内外の社会課題は一層深刻さを増しています。その中で国際協力NGOが、より有意義で魅力ある活動をするためには、どんな変化が必要でしょうか。ここでは2つほど、提案をしたいと思います。

第一に、若者や新しいNGOの新規参入です。そのために、私たちJANICを含む既存のネットワークや、公的機関・助成財団等が適切に支援をしていくことが必要です。

新しくNGOを設立した経営者に聞いてみると、「有給専従職員1名を置くまでがとても大変だった」「団体の活動をスタートしてから、年間の財政規模を一定程度にするまで、公的な支援がほとんど受けられず、助成も限られていた」などの声が聴こえます。外務省の日本 NGO 連携無償資金協力や、JICA草の根技術協力事業などの公的資金は、小規模なNGOにとっては申請のハードルが高いのが実情です。小規模NGOも活用できる資金は、政府・民間を問わず限られています。さらに日本の助成金は、そのほとんどを事業費に充て、一方で人件費・管理費への活用は制限されるという使途の条件がつく傾向にあるため、助成金を得て事業運営をする場合、結果として「やるべき活動」が増えても、それを担うマンパワーは増やせないこととなり、組織運営がかえって難しくなります。かといって寄付文化があまり育っていない日本社会では、会費や寄付を集めることもまた、かなりの力量が求められます。

これらの課題を解決するため、①政府機関や民間財団は、小規模NGOや設立年数が浅いNGOに対する支援スキームを充実させていく➁ネットワークNGOを含む中間支援組織は、小規模NGOが組織基盤強化をするための伴走支援の機能や、コミュニティづくりを強化していく➂既に中規模以上に成長しているNGOは、これまでに培ったノウハウや人脈を、新規NGOを含む業界全体に還元していくといった対策が求められるのではないでしょうか。JANICでは、上記①~➂の施策を促進していくとともに、小規模なNGOが私たちのコミュニティに加わりやすいよう、さらに仕組みを整えていきたいと考えています(注2)。

第二に、NGOセクターに関わる私たちが楽しく活動しながら、NGOの魅力を社会に積極的に発信していくことが必要だと思います。その取り組みの1つとして、NGOの若手・中堅職員の有志グループである「NGOの放課後」(注3)は、2022年10月17日に、「#NGOスタッフが感動した話」を一斉に呟くTwitterトレンドハックキャンペーンを実施しました。NGOの役職員やボランティアなどから合計300件くらいのTweetの投稿があり、NGOの魅力を広く社会に発信する取り組みとなりました。

私もいくつか投稿しましたので、そのうちの1つをご紹介します。

「東日本大震災が起こった直後、アメリカやヨーロッパのパートナーのネットワークNGOの皆さんが日本に心を寄せてくれて、支援を呼び掛けてくれたり、英語で作成した資料の校正をボランティアでしてくれた。こうやって支えあいながら生きている」

このキャンペーンを企画し、参加してみて、自分が感動した経験を思い出して再び感動したり、他の方の投稿を見て、NGOで働く良さに共感をしたり、とても元気になりました。私の投稿と同様、NGOのコミュニティ内での支えあいがNGOの魅力であるという声も多く寄せられました。

NGOに関わる私たち自身が、日々ポジティブにミッションに取り組んでいるというエネルギーを社会に発信していくことで、セクター全体が魅力的に成長していけるのではないか、と考えています。

(ウィークリーコラムは個人の見解に基づく記事であり、THINK Lobbyの見解を示すものではありません)

(注1)NGOデータブックは、外務省「令和3年度開発援助調査研究業務 日本のNGOの実態調査」を受託し、JANICが作成した調査報告書。詳しくはこちら。

https://www.janic.org/blog/2022/04/22/ngodatabook2022/

(注2)JANICでは今年から総会で議決権を有する正会員の会費テーブルを改訂し、年間財政規模が1千万円未満の団体の会費を3万円から1万円に引き下げました。

https://www.janic.org/wp-content/uploads/2017/05/membership_provisions_2022feb.pdf

(注3)「NGOの放課後」(通称:Nカゴ)は、日本の国際協力NGOの20〜40代若手・中堅スタッフが、関心があるテーマの勉強会を通じて、横のつながりを広げることを目的に、2022年7月に有志によって設立されました。