2023.01.23

037 一枚の年賀状から考える日本の安保政策

SNSの普及や年齢的な要因から、いただく年賀状は年々減っている。加えて今年は、「来年からは年賀状を辞退する」という、「年賀状じまい」がいつもより多かった。

そんな中、年賀状に気になる一言を添えてきた友人がいた。そこには、「強権国家による暴虐をなくすためには、民主国家も力の行使が必要であることを認めざるを得ない状況にあると思います」とあった。普段、安全保障には関心がないと思っていた友人が、このようなことを言ってきたことにビックリした。「武力行使やむなし」という意見は、昨年、私が出席した民主主義に関する国際会議でも、市民社会の参加者から多く聞かれた。これが現実なのか、とも思う。

しかし私は、市民社会として、やるべきことは色々あると思っている。まず、防衛・安保政策に関する議論が必要だ。この議論が、NGOをはじめとする市民社会の中で活発に行われてきたとは言えない。

JANICは1月10日、「防衛政策の大転換について、政府の丁寧な説明を求めます」という声明を出した。

https://thinklobby.org/news_events/2023jan10_pressrelease_boeihi/

一方で「市民社会の意見は、何ですか」と、聞かれたら、どう答えるだろうか。「軍備増強反対、憲法9条改正反対」だけではないはずであり、市民社会の側でも多様な意見の交換が必要だと思う。

ところで、1月6日に発表された日本財団の「18歳意識調査」*の結果にはショックを受けた。「少子化対策の財源」の問いに対する上位の答えが、「法人税率を上げる(29.5%」「年金関連支出を減らす(22.2%)」「国際協力関連支出を減らす(21.5%)」だったのだ。「国際協力関連支出を減らす」という答えは、驚いたことに「防衛費削減(15.6%)」より、はるかに高かったのである。防衛費よりもODAを減らせ、という意見は、これまでなら少数派であっただろうが、これも時代を反映した意見なのであろうか。

日本は1945年の終戦以降、日本国憲法の下で80年近く「平和」な時代を過ごしてきた。そのこと自体は、誇るべき日本の財産でもある。一方で、大きな時代の転換期にあたり、日本及び世界の平和のために、安保政策のあり方も含め、我々はどのような考え方で世界の現実に向き合っていくべきなのか、一人ひとりが考える時が来ている。

JANICの理念である「平和で公正で持続可能な世界の実現に貢献」するために、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に取り組むことが重要であるのは言うまでもない。THINK LobbyとしてはJANICの理念に基づきつつ、NGO、企業、有識者、防衛省や外務省等を交え、安全保障のあり方についての議論や対話を始めたいと思う。なぜなら、開発協力が、世界各地で起きている市民社会への武力行使に密接にかかわっているケースがあるからだ。市民が国際的に連携することで、軍事力の行使に一定の抑制力を持つなど、市民社会がシビリアンコントロールの一端を担うこともあり得るのではないだろうか。ご意見・感想などあれば、是非、THINK Lobby(admi@thinklobby.org)までお寄せいただきたい。

*参考:日本財団18歳意識調査「第52回 –価値観・ライフデザイン–」報告書2023年1月6日

https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2023/01/new_pr_20230106_01.pdf

(ウィークリーコラムは個人の見解に基づく記事であり、THINK Lobbyの見解を示すものではありません)