2023.01.31

038 子どもたちの奪われた時間

満員電車に乗っている時、ふと、学習塾のポスターのコピーに目がいった。

「かつてない三年間、試練の日々でした」

新型コロナの感染拡大で、子どもたちは様々な我慢を強いられてきた。一生に一度しかないそれぞれの日々を、あれも我慢、これも我慢。そして、受験シーズン。学習塾のポスターは、そんな子どもたちにエールを送っていた。思わず、目頭が熱くなった。

もちろん日本の子どもたちだけでなく、世界中の子どもたちが我慢をしてきた。中には、学校を辞めざるを得なかった子どもたちもたくさんいる。

例えばバングラデシュ。現地の英字新聞にこんな記事があった。「170万人の子どもたちを学校へ返せ」というタイトルだ。

記事によるとバングラデシュ国内では、新型コロナの感染拡大が始まってから、少なくとも176万人の子どもが学校を辞めざるを得なかった、という。2020年から2021年までの2年間では約25万人の大学生が、また6万人余りの中学生が、そして145万人の小学生が、それぞれ学校を辞めた。そしてその多くが、もう学校へは戻れないだろう、としている。

記事によると、子どもたちは学校を辞めて、多くは働いたり、結婚させられたりしているという。

国連は18歳未満の結婚またはそれに相当する状態を「児童婚」と定義しているが、コロナ禍で児童婚が加速したという。ユニセフによると、バングラデシュで女の子が18歳未満で結婚する割合は59%。世界でみると、ニジェール(76%)、中央アフリカ共和国(68%)、チャド(67%)、マリ(55%)、ブルキナファソ(52%)、南スーダン(52%)、ギニア(52%)、モザンビーク(48%)、インド(47%)などとなっており、主にアフリカや南アジアで児童婚問題が深刻であることが分かる。

さらに記事は、社会を日常に戻そうとする取り組みの中で、子どもたちの教育が後回しにされがちだ、と指摘する。特に、もともと社会基盤が弱い上に、コロナ禍で大きな経済的打撃を受けた発展途上国は、経済回復に時間がかかり、子どもたちの失われた教育機会を取り戻す対策が後手に回っているという。

子どもたちの教育は、将来への投資でもある。教育の機会が奪われることは、子ども自身にとって重大な人権侵害であると同時に、社会にとっては大きな損失だ。教育は、コロナ禍の最も深刻で長期的な影響を受けた、といえるだろう。

(ウィークリーコラムは個人の見解に基づく記事であり、THINK Lobbyの見解を示すものではありません)