2022.09.06

018 イノシシとの格闘で考える生物多様性

八ヶ岳南麓(山梨県北杜市高根町)生活を始めて4カ月。週の大半を八ヶ岳で過ごし、自然環境豊かな生活をエンジョイしています。今日のお題は、「害獣との格闘で考える、生物多様性」です。でも「害獣」とか、「雑草」という言葉自体が、まさに人間中心の捉え方であると、引っかかりながら使っているのですが。

八ヶ岳と棚田

八ヶ岳では、運よく近くに畑を借ることができ、トマト、キュウリ、ナス、ゴーヤ、ピーマン等、夏野菜を15種類ほど植え付け、収穫も順調でした。でも、「その日」は突然、やってきました。7月末、イノシシの集団に畑を襲われて、1週間で、カボチャ、サツマイモ、トウモロコシ、大根等が全滅したのです。それまでも、ズッキーニやキュウリが鹿等に食べられましたが、「動物への餌」ぐらいに割り切り、「共存」をはかっていました。

ところがイノシシは、完全に畑を「破壊」したのでした。せっかく今春、石だらけの荒れた畑を耕し、大事に育てたのに……。よく自然災害で畑が水に浸かり、あるいはリンゴ等が落下したニュースをみますが、その農家さんの気持ちが、何百の一でも分かった気がしました。まさに怒りと同時に茫然自失の状態になりました。

荒らされたサツマイモ

しかし一方で、イノシシにも生きる権利があり、彼らにとって、後からこの地に入り自然を荒らしたのは人間の方であり、迷惑な存在なのだと自分に言い聞かせています。八ヶ岳南麓には、自宅や周辺を歩いていても、見たことのない美しい昆虫、動物では鹿、キジ、キツネ、そして様々な鳥類に遭遇します。何と、豊かな自然なんだろうと。この自然の豊かさの中に、人間も生かされているのだと思うのです。

鹿の親子

庭のヒナ

カマキリ

最近は、「生物多様性」という言葉をよく聞くようになりました。つまり人間を含む動植物から、菌類などの微生物まで、地球上に生息するすべての「いきもの」たちが支えあいバランスを保っている状態のことを言います。地球上には、さまざまな環境に適応して進化した3,000万種ともいわれる多様な「いきもの」がバランスよく生息しており、人間も、そんな自然環境の中で生きているのです。そのバランスをものすごいスピードで人為的に壊しているのが、我々人間の活動なのです。

生物の歴史は発生、分化(進化)、そして絶滅の歴史といえます。そして、およそ6億年の間に、誕生した生物の90%以上(99%という考え方もある)が絶滅したといわれています(WWFサイトhttps://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3517.html)。しかし人間の人為的な活動によって、その絶滅が早まっているといるのです。私たちは生物の歴史上、かつてない「大量絶滅」の時代に生きていると言われています。近代から現代にかけて起きた野生生物の絶滅の原因は、そのほとんどが人類の行為に起因するそうで、恐竜がいた地質時代の絶滅とは全く様相が異なるようです。つまり人間による人為的な社会経済活動により、気候変動が起き、多くの生物が絶命の危機にあり、その行きつくところは、人類の絶滅ではないかと思うのです。

気候変動や生物多様性の重要性について、私たちは気がつきにくい(気がつこうとしない)日々の中で生活しています。でも間違いなく自分たちができることは何なのか、考えてみる必要がありそうです。それがSDGs(持続可能な開発目標)でもあるのです。もしかしたら手遅れなのかもしれませんが、何事にも遅すぎることはないと信じています。

(追伸)イノシシ等から農作物を守る苦悩は当面続きそうですが、それが自然の中で生きている、共存の証拠なのだと、自分を慰めています。