2022.09.28

021 気候変動の影響を受けるのは最も脆弱な人たち

私は東京在住ですが、この8月は猛暑で子どもを日中、外で遊ばせることもできませんでした。また、秋は台風の影響を大きく受けています。私の子どもたちは先日の家族旅行で歩いた静岡県の一部地域が台風15号の影響で水没しているニュースにショックを受けていました。日本でも様々な影響がありますが、世界には、より災害に脆弱な地域があり、今まさに苦しんでいる人たちが大勢いることに胸が痛みます。

パキスタンの洪水でも、国土の3分の1が水没し、3,300万人以上が被災したといわれています。国連や報道機関による現地の動画を見ると、幼い子どもが、蚊帳もない無防備なテントの中で眠り、不衛生な環境の中で生活し、飲食もままならないという状況は、直視するのが難しいほどです。私自身、NGO職員としてだけでなく、子どもを育てている親としても、現地の子どもたちがおかれている環境に愕然とします。

そんな被災者に人道支援をおこなう際の参考書として、「スフィアハンドブック」があります。人道憲章に照らし、提供されるべき人道支援の最低基準について示されたものですが、実際にその基準をクリアするのは簡単なことではありません。そんな理想と現実のギャップを縮めるべく、「スフィア研修」を人道支援の関係者に提供していくことも、JANICのミッションの一つです。

しかしそもそも、このような災害を発生させる原因にも目を向けなければいけません。今後も温暖化が進み、産業革命前から2度気温が上昇すると、豪雨や洪水による被害はますます増えると言われています。

ロックストローム博士が発表した「ホットハウス・アース」理論では、産業革命前に比べて地球の平均気温が「+1.5℃」を超えてさらに上昇すると、温暖化が連鎖的におき、後戻りできない状況になるとしています。たとえ人類が温室効果ガスの排出をやめたとしても、数百年かけて「+4℃」というきわめて危険なレベルに到達してしまう、「灼熱地球」へのシナリオだと警告しているのです。ここ10年が地球の生態系を守る上でキーとなると言われています。

パキスタンは、気候変動の影響とみられる二酸化炭素の排出が比較的少ない国です。それなのに、気候変動の影響を最も大きく受ける国の1つ。そのような理不尽な現実を直視せず、二酸化炭素を排出してきた日本を含む先進国の私たちが大規模な支援を行うのは、チャリティとしてではなく、道義的責任ではないでしょうか。JANICの正会員NGO(難民を助ける会、シャンティ国際ボランティア会、JEN、ピースウィンズ・ジャパンなど)もパキスタンへの支援活動を実施していますが、現地のニーズを満たすには、より多くの支援が必要です。

私たちが生きていくために消費している電力や衣類、食料などが地球の気候に多大な影響を与え、結果としてパキスタンを含む地球の災害につながっているという悲しい事実。根本的に変えるべきなのは、私たちの意識と、生活様式、そして地球とのつきあい方ではないでしょうか。人間が驕り、自然を破壊してきた結果が、最も脆弱な人たちの生活に多大な影響を与えていること。この原因と結果の両方に対し、一人の人間として、またJANICの事務局長として、志を共有する仲間を作り、増やし、繋がりながら、日々のNGO活動を通じて責任を果たしていきたいと考えています。

(ウィークリーコラムは個人の見解に基づく記事であり、THINK Lobbyの見解を示すものではありません)