2024年04月15日(月)
【声明】2023年のODA速報値に対する市民社会共同声明
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2024年4月11日、OECD(経済協力開発機構)は、2023年(暦年)のOECD開発援助委員会(DAC)メンバーのODA実績(暫定値、贈与相当額計上方式)を公表しました。
外務省の発表によれば、日本政府のODA実績は、米ドルベースで、196億84万ドル(前年比12.0%増。なお、円ベースでは前年比19.7%増の2兆7,540億円)となりました。
JANICも参加するDAC市民社会レファレンスグループ(*注1)では、同日中に市民社会による共同声明を発表し、OECDによるODA(援助)の定義が拡大し、その結果、援助は貧困根絶と経済福祉の達成という本来の目的から遠ざかり、現在では多くの物議を醸す資金や物資の流れを含んでいる、と指摘しています。
特に、「ドナー国内での難民支援費用」(in-donor refugee costs: IDRC)とも呼ばれる難民の受け入れ費用をODAとして報告することは、ドナーがODAを膨らませ、統計を歪める原因となっており、ドナー国は、開発途上国の貧困と不平等の削減を目的とした義務を果たすための資金をODAから転用する必要がないだけの富を持っているにも関わらず援助を増額しようとしない姿勢を批判しています。
JANIC政策アドバイザーである高柳彰夫(フェリス女学院大学国際交流学部教授)は次のように述べています。
「2023年のDAC諸国のODAの合計は2,237億ドルで、前年に比べて1.8%の増加で、また金額として過去最高を更新しました。これはDAC諸国のGNI(国民総所得)の0.37%に当たりますが、国際目標の0.7%に比べると大きく不足しています。増加の最大の要因は対ウクライナ援助が9%増加し、200億ドルとなったことです。ウクライナは最大の二国間ODAの受け取り国です。
DACは加盟国が受け入れた難民に対する支援は一定の条件を満たしたものについて1年間に限りODA実績に計上できるというルールがあります。これをIn-donor refugee cost(IDRC)といいます。IDRCは2022年にはウクライナ危機に伴い急増しましたが、2023年は前年比6.2%の減少となりました。それでも2023年のDAC諸国全体のODAの13.7%(2022年は14.4%)を占めます。IDRCを除くとODAは3.2%増加したことになります。世界のNGOは先進国が人道の観点から難民受け入れに積極的であるべきであるが、先進国内での支出となるIDRCをODAとして計上できる制度は、途上国の開発や貧困削減というODA本来の目的からふさわしくないと考えてきました。
2022年には減少したLDCs(後発開発途上国)向けとサハラ以南アフリカ向けのODAは、2023年には微増となりました。
外務省の発表通り、日本のODAは196億ドルで前年比15.7%の増加でした。DAC諸国の中ではアメリカ、ドイツについて第3位のODA供与国でした。対GNI比は0.44%でした。0.7%の国際目標を上回った国は、ノルウェー、ルクセンブルグ、スウェーデン、ドイツ、デンマークの5か国に限られました。」
DAC市民社会レファレンスグループによる声明の原文(PDF)はこちらをご参照ください。
DAC市民社会レファレンス・グループ声明
膨らまされと歪曲され:2023年の援助速報値は地球規模課題への対処の失敗を示す
OECDは本日、2023年の政府開発援助(ODA)に関する統計速報を発表した。これは、ODAがどれだけ使われたか、どこに使われたか、何に使われたかを示す。
絶対額ベースでは、ODAは2022年から増加し、2,237億ドル(*注:約31兆4,298億円、DAC指定為替換算レートである1ドル=140.50円で計算。以下、同様)となった。これはOECD DAC加盟国全体のGNIの0.37%に相当する(2022年と同様に低い水準である)。
しかしながら、DAC市民社会レファレンス・グループ(DAC/CSO RG)は、これらの数字に反映されている根底にある傾向に大きな懸念を抱いている。DACは「ODA現代化プロセス」を通じて、ODAとみなされるもののリストを大幅に拡大した。その結果、援助は貧困根絶と経済福祉の達成という本来の目的から遠ざかり、現在では多くの物議を醸す資金や物資の流れを含んでいる。
「ドナー国内での難民支援費用」(in-donor refugee costs:IDRC)とも呼ばれる難民の受け入れ費用をODAとして報告することは、ドナーがODAを膨らませ、統計を歪め、その結果、ドナーの真の努力を正しくあらわさない主な方法である。2023年のIDRCは309億6,700万ドル(*注:約4兆3,508億円)で、2022年の310億ドル(*注:約4兆3,555億円)からわずかに減少したが、それでも、2023年のODAの13.8%を占めている。これはドナー国自身への支払いである。
さらに、ドナー国は受け入れ難民に十分な資源を提供するためにODAが必要だと主張するが、難民の状況は攻撃にさらされ続け、驚くほど悪化している。その一方で、これらの資金は、紛争予防、早期警戒、そして、新たな紛争に対処するための行動から転用されている。ドナー国は、開発途上国の貧困と不平等の削減を目的とした義務を果たすための資金をODAから転用する必要がないだけの富を持っている。
難民の受け入れは人権上の義務であるが、DAC/CSO RGはこれをODAとして報告することに非常に強く批判してきた。
IDRCは、ODAがドナー国自身の優先順位をますます反映するようになってきている一つの方法に過ぎず、それはテーマ別にも地理的配分にも表れている。
2023年は、ここ数十年で最も紛争が多発した年となった。この困難な状況の中、DAC/CSO RGは、援助が最も必要としている人々に届くよう繰り返し呼びかけ、援助の地政学化が進むことに警告を発してきた。今回もまた、ウクライナが被援助国のトップになっている。ウクライナに甚大かつ深刻な人道および開発ニーズがあることは間違いないが、世界の他の55以上の紛争で苦しむ人々への援助が停滞または減少していることは懸念される。援助の地政学化の影響は、イエメンからガザ、スーダンからハイチに至るまで、紛争の影響を受けた地域で最も困窮している人々を危険にさらしている。
後発開発途上国(LDCs)への援助は減少傾向にあり、ODAの速報値統計によれば、この傾向は2023年には続かなかったものの、ODA全体の量から見れば増加はわずかなものであった。2022年に7.4%減少したサハラ以南のアフリカへの援助は、実質ベースで5%増加した。一方、多発する危機は、引き続きグローバル・サウスの国々を不釣り合いに直撃している。最貧国は、COVID-19のパンデミック、世界的なインフレーション、持続不可能な債務、気候変動による緊急事態の影響から依然として立ち直れないでいる。ドナー国の国民総所得(GNI)の少なくとも0.15%から0.2%を後発開発途上国に援助するという国連の目標が繰り返し達成されていないことに、弁解の余地はない。
半世紀以上前、援助国はGNIの0.7%を援助に費やすことも約束した。しかし、この目標の達成は程遠い。DACメンバーのうち、達成したのはデンマーク(0.74%)、ドイツ(0.79%)、ルクセンブルク(0.99%)、ノルウェー(1.09%)、そしてスウェーデン(0.91%)のわずか5カ国であり、そのうち2カ国はIDRCを含めることで達成したに過ぎない。
効果的な援助と開発協力の必要性がかつてないほど高まっているにもかかわらず、このようにODA統計が失望させるような結果であることは、援助配分と条件を決めつけ、一方で被援助国にはその席に座ることを拒む、壊れたシステムを改めて反映している。
DAC市民社会レファレンス・グループは、その効果を最も良く判断できることから、こうした重要な意思決定プロセスにおけるグローバル・サウスの参加とオーナーシップを断固として支持してきた。選ばれた富裕国のグループが密室での意思決定を通じて、ODAを受け取り、かつODAに大きく依存している国々の最善の利益を念頭に置くかどうか、単純に信頼することはできない。
このような不均衡な意思決定の結果、ODAはその中核的な目的から遠ざかり、ドナー自身の国内利益とますます整合するようになっている。最近のODAのルール変更は、よりインクルーシブで代表的なODAガバナンスの確立について真剣に話し合う必要があることを明らかにした。援助の未来は、援助効果の原則に沿った、人権に基づき、透明性の高い援助配分でなければならない。
賛同団体一覧:
- Reality of Aid Africa / Kenya
- Croatian Platform for International Citizen Solidarity (CROSOL) / Croatia
- La Coordinadora de Organizaciones para el Desarrollo / Spain
- AidWatch Canada / Canada
- Asociación Coordinadora de la Mujer / Bolivia
- Alliance Sud / Switzerland
- 11.11.11 / Belgium
- Global Citizen / Global
- ERIKS Development Partner / Sweden
- Women’s International League for Peace and Freedom (WILPF Sweden) / Sweden
- ActionAid Italia / Italy
- Japan NGO Center for International Cooperation (JANIC) / Japan
- Oxfam / Global
- PMU / Sweden
- Cordaid / the Netherlands
- Eurodad / Belgium
- Reality of Aid – Asia Pacific / Philippines
- Civil Society Platform for Peacebuilding and Statebuilding (CSPPS) / Global, Netherlands
- Council for People’s Development and Governance (CPDG) / Philippines
- KCOC Policy Center / Korea
- CNCD-11.11.11 / Belgium
- ACT Alliance EU / Belgium
- Inter Pares / Canada
- Concord / Belgium
- Bond / United Kingdom
- Caritas Europa / Belgium, Europe
*注1:DAC市民社会レファレンス・グループ(DAC-CSO Reference Group)は、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会 (DAC)に対する北と南の市民社会組織(CSO)の関与を促進し、調整する。このグループは、OECD-DAC の関与に関連する活動、立場、そして進むべき道を計画し、 調整する役割を果たしている。DAC諸国および非DAC諸国のCSOが参加するオープン・プラットフォームとしてのグループの活動は、合意形成、透明性、説明責任という原則に導かれている。
https://www.dac-csoreferencegroup.com/