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2024年07月23日(火)

『2024援助の透明性インデックス』公表、JICAは大幅に改善

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堀内葵

開発途上国に対して実施される援助の情報について、これまで各ドナー(援助機関)が自主的に公開するほか、多国間の取り組みでは、OECD(経済協力開発機構)の枠組みで、「アクラ援助効果向上ハイレベルフォーラム」(2008年)、「釜山援助効果向上ハイレベルフォーラム」(2011年)、「効果的な開発協力に関するグローバル・パートナーシップ」(2014年)などの国際会議において合意された「国際援助透明性イニシアティブ(International Aid Transparency Initiative / IATI)」に沿って実施されています。

日本においても、「援助の透明性・説明責任の一層の向上を図る」ことを目的とし、JICAは2014年以降、外務省は2016年以降、IATIが定めるフォーマットに従って、ODA主要実績のデータを公開しています。

【参考】国際援助透明性イニシアティブ(International Aid Transparency Initiative:IATI)に対応したODA実績の公表(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/yosan/page22_000103.html

2024年7月、IATIに参加するイギリスのNGO「Publish What You Fund(以下、PWYF)」が『2024援助の透明性インデックス(2024 Aid Transparency Index)』を公表しました。PWYFは、世界各国の援助機関が実施するODAプロジェクトについて、「予算」「実施状況」「組織戦略」「調達方針」「配分方針」「資本投資」「結果」等の35の指標に関する調査を行い、透明性を構成する要素を評価し、2年ごとの公表しています。各指標に与えられるスコアは、データ利用者にとっての情報の重要性に基づいて重み付けされ、合計で最大100ポイントが与えられるとともに、「とても良い(very good)、「良い(good)」、「適正(fair)」、「不十分(poor)」、「まったく不十分(very poor)」の5段階で評価されます。

「援助の透明性インデックス」は、世界の主要な開発援助機関について、援助の透明性を測る独立した唯一の指標です。

2024年の全調査対象機関の平均スコアは、これまでで最も高くなりました。このスコアの増加は、評価対象となる50の国際援助機関が公表する援助データの質、量、適時性の段階的な改善を反映しています。ひとつを除いてすべての援助機関が、少なくとも一部のデータを国際援助透明性イニシアティブ(IATI)基準で公表しています。これは、オープンで、標準化され、比較可能で、機械読み込みが可能であることを意味します。この結果、「まったく不十分(very poor)」のカテゴリーに入る援助機関の数は過去最小となりました。

報告書全文のダウンロードはこちらから。
https://www.publishwhatyoufund.org/app/uploads/dlm_uploads/2024/07/2024-Aid-Transparency-Index-report.pdf

2024年7月16日にブルッキングス持続可能な開発センター(Center for Sustainable Development at the Brookings Institution)とPublish What You Fundが主催した『2024援助の透明性インデックス』発表イベントは、以下から視聴可能です。https://www.brookings.edu/events/aid-transparency-sustainable-development-goals/

日本の援助機関であるJICAも調査対象に含まれています。JICAは、技術協力、政府開発援助(ODA)による借款、無償資金協力の形で150カ国以上に援助を提供しています。また、外務省管轄の人道支援も行っています。JICAはIATIメンバーではありませんが、前述の通り、JICAは2014年にIATIに基づく援助データを公開していました。2022年に一時、公開を中断し、その後、再開した結果、2024年のインデックスは31.9ポイント上昇しました。「パフォーマンス」と「財務・予算」の項目が改善された結果でもあります。2024インデックスにおける援助の透明性に関するJICAのパフォーマンス概要は以下の通りです。

  • スコア:54.8/100
  • 順位:37/50
  • 2024年の評価:FAIR(適正)

スコアの詳細は以下の通りです。

  • 組織計画とコミットメント:13.1 / 15
  • 財務と予算:10.4 / 25
  • プロジェクトの属性:10.9 / 20
  • 開発データの結合:11 / 20
  • パフォーマンス:9.4 / 20

『2024年援助の透明性インデックス指数』では、JICAに対していくつかの提言がなされています。

  1. JICAは、プロジェクト予算、入札、実績と計画日、タイトル、タイアップ援助状況など、いくつかの分野で相対的にパフォーマンスが低い。
  2. JICAは、予算、プロジェクト予算書、支出・支出明細の公開を開始することで、財務・予算の分野で改善できる可能性がある。
  3. JICAは、活動に関するプロジェクトの条件を開示するか、条件が含まれていない場合はその旨を提供することを検討すべきである。
  4. JICAは、すべての活動において、プロジェクトレベルの成果を公表し始めるべきである。
  5. JICAは、IATI基準で公表されるデータを、月次でなくとも少なくとも四半期ごとに更新することを目指すべきである。

 

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堀内葵