2023年01月10日(火)
防衛政策の大転換について、政府の丁寧な説明を求めます
提言
防衛政策の大転換について、政府の丁寧な説明を求めます。
JANIC理事長 鬼丸昌也
岸田内閣は、防衛費をGDP比2%へ引き上げる中で、昨年末、2023年度の防衛予算を6兆8219億円とし、前年度比26%の大幅な増額を決めました。さらに、12月6日には「安保三文書」が閣議決定され、敵基地攻撃能力の保有という防衛政策の根幹を変更することになりました。一方でODA予算は、1998年以来減少が続き、その当時の水準からは半減しており、国際協力における日本のプレゼンスの縮小につながっています。
敵基地攻撃能力の保有は、他国の領域における武力の行使であり、防衛政策の解釈の問題ではなく、根源的な政策変更になります。これまでは自衛権の発動として、防衛力は他国からの攻撃を排除するための必要最小限のものに限られていました。従って敵基地攻撃能力は、隣国からは脅威として捉えられる可能性を高めることになったと受け止めています。
必要な防衛費の増額や防衛政策の変更については、憲法に則り、国会等での場で議論を尽くすと共に、市民・国民に丁寧かつ十分な説明のプロセスが必要です。しかし実際に増強された防衛力と外交を組み合わせ、日本と世界の平和と安定をどのように確保するのか、一連の政策の有効性、実効性が深く議論された形跡も見えません。また、市民に対する丁寧な説明は、全くなされておらず、説明責任を果たしているとはいえません。
同様のことが、昨年(2022年)9月に発表された「開発協力大綱の改定」でも言えます。なぜ大綱を改定するのか、改定の根拠とした国際情勢の変化や「開かれたインド太平洋(FOIP)」という概念についても、市民社会が納得できる具体的な説明はありませんでした。
外交・安全保障政策の大きな変更は、私たち市民の暮らしや、JANICに参画するNGO等が世界各地で展開する支援活動にも影響を与えるものです。SDGsの目標16に掲げる「平和と公正をすべての人に」を達成する上において、そのプロセスも平和的であるべきだと、人道支援・開発援助にあたってきた国際協力NGOの経験からも強く訴えるものです。
本声明で取り上げた外交・安全保障政策の大幅な変更については、全体として「政策議論」「説明責任」が全く足りていません。改めて今回の一連の政策変更や防衛予算増について政府の説明を求めます。
最後に、平和で公正な社会の実現を目指すJANIC/THINK Lobbyとして、外交・安全保障政策の変更にあたって、市民の視点に立った議論を促進させるために、政策提言・啓発活動を引き続き実施してまいります。
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本件に関するお問い合わせ:JANIC 内 THINK Lobby 若林・堀内 janic-advocacy@janic.org