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2024年02月27日(火)

【メディア掲載】大阪から世界へ:自国を越えて社会正義のための闘いを (堀内副所長インタビュー和訳転載)

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大阪から世界へ:自国を越えて社会正義のための闘いを
(堀内副所長インタビュー和訳転載)
インタビュー:スベンドリニ・カクチ
翻訳:THINK Lobby

※この記事は、2024年2月16日にアジア・デモクラシー・クロニクルに掲載された英文の記事を直訳したものです。
編集部注:アジア・デモクラシー・クロニクルでは、民主主義の理想を唱え、人権を擁護することに生涯を捧げてきた、この地域の市民社会および民主化推進活動家たちによる「as-told-to(語られる通り)」というナラティブ・シリーズを連載している。ここでは、こうした人々がどのように民主主義のビジョンを追求してきたかについて、直接の体験談を提供し、真に公正で公平、かつ人道的な社会のための闘いに参加するよう、他の人々を鼓舞している。

大阪出身の堀内葵は、国際協力NGOセンター(JANIC)のアドボカシー・リサーチ部門であるTHINK Lobbyの副所長であり、アジア・デモクラシー・ネットワーク(ADN)のメンバーでもある。2018年には、日本における市民社会スペースの保護と拡大に向けて活動するNGOの連合体である「市民社会スペースNGOアクションネットワーク(NANCiS)」を共同設立した。
彼は最近、アジア・デモクラシー・クロニクルの取材に応じ、自身の活動やアドボカシーについて語り、日本やその他の国における民主化推進活動についての見識を共有した。

●インタビュー本文
大阪で育った私は、社会正義の必要性を深く確信するようになった。それは、例えば、体制側を代表する首都東京で育った場合とは異なる経験だった。

日本で2番目に大きな都市である大阪は、日本の人権に関する記録を含む長い歴史を持つ、広大な複合都市だ。大阪には、自由と運動に取り組む多くの小さな非政府組織がある。

学校では、日本の被差別部落民が直面する差別について学んだ。被差別部落民は、下層階級に分類されるという集団的な闘争が今も社会の底流にある。このコミュニティは、大阪と関西地方にルーツがある。当時、私は弱者の権利を守る運動に心を揺さぶられた。大学生だった私は、過酷な労働や危険な労働に従事する一般労働者の権利保護を求める労働組合の交渉にも参加した。
こうして若い頃から、弱者を標的にした暴力がない、正義が支配する世界を実現するという未来像に強く惹かれるようになった。これが、私が民主主義と人権を推進する市民団体に参加しようと決めた主な理由だ。

もうひとつの影響は、日本人と比べて不平等に扱われている日本最大の少数民族とされる朝鮮民族への人種差別である。

大阪とその近郊は、日本と朝鮮半島が近いことから、何世紀にもわたって交流の場となってきた。両国の関係は紀元前3世紀までさかのぼり、朝鮮人芸術家の渡来と日本の侵略の開始によって特徴づけられる。現在、在日コリアンと呼ばれる日本の朝鮮人人口は約29万人である。彼らの多くは、1930年から1945年の日本の植民地時代に強制労働政策に苦しんだ戦時中の朝鮮人の子孫である。彼らは長い間、自分たちの朝鮮人としてのアイデンティティと言語を認めるよう働きかけてきた。

私たち大阪人はまた、疑問や個性を追求することを恐れない人々とみなされている。私たちは声が大きいという特徴があるが、これは、無口でまじめという一般的な日本人のイメージとは正反対である。つまり、私の活動の隠れた核心は、大阪の精神にあると言える。

例えば、2013年に持続可能な開発、環境保護、人権の促進に焦点を当てたアジアのNGOのネットワークであるアジア開発連盟(ADA)に参加したとき、私はより多くの洞察を得た。私たちは、マルチステークホルダー・パートナーシップと市民社会内の相互協力を通じて、いかにして公平な開発を達成できるかを議論した。国連会議中にサイド・イベントを企画し、アジア各国政府の代表を招き、政府と市民社会の役割について批判的な報告書を発表した。

ADAに参加する前、私は人々の水を得る権利に関する調査を行った。この調査で私は、メキシコ、インド、インドネシアといった国々の状況に目を向け、水利用の民営化が貧しいコミュニティの権利をあからさまに無視していることを知った。村々は、富裕で強力な企業が高級ホテルや工場などのプロジェクトのために水資源を再利用することを可能にする政策の犠牲者となっていた。私たちのデータは、健康問題や農民の収入減といった問題を明らかにすることで、水と衛生への平等なアクセスを求める活動家たちを支援した。

この経験は、私自身の改革追求への扉を開いた。社会から疎外された人々の声に耳を傾け、彼らの活動を目の当たりにすることで、グローバルな課題に対する私の理解はさらに深まった。

現在、私はいくつかの市民団体に関わっている。そのひとつが国際協力NGOセンター(JANIC)の一部でもあるTHINK Lobbyで、アジアの民主主義の強化を目指すシンクタンクとして2022年に発足した。JANICはまた、アジア地域の民主主義を支持し、人権侵害を監視するアジア・デモクラシー・ネットワーク(ADN)のメンバーでもある。

2018年、ADNは民主主義共同体(CoD)とともに釜山民主主義フォーラムを開催した。私は現在、連動する東京民主主義フォーラムのリーダーを務めている。2023年4月には、インドのボランタリー・アクション・ネットワーク(VANI)、モンゴルの人権開発センター(CHRD)、ネパールNGO連合(NFN)、パキスタン開発連盟(PDA)、アジア・センター(Asia Centre)、人権・環境・開発のための国際研究所(INHURED International)とのパートナーシップにより、インド、モンゴル、ネパール、パキスタンを対象に、アジアにおける民主主義の進展について報告した。私たちは、女子教育の保護、地元の市民団体に対する嫌がらせの廃止、表現の自由、平和・正義・強固な制度の促進を目指すSDGs目標16の推進、といった問題に焦点を当てた。

さらに、民主主義と人権に対する国際的な支援を制限するような法律が自国内で新たに制定されたことに反発する東南アジアのカウンターパートとも連携している。2023年、私たちは「東南アジアにおける外国干渉法」と題する報告書を発表した。この報告書では、権威主義的な国々における規制が、国境を越えた協力やパートナーシップを抑制し、市民社会スペースを守るための地元の取り組みにとって重要なドナーからの資金提供を阻止しようとしていることに焦点を当てた。私たちはこれらの法律の廃止を共に提唱している。

JANICでは、持続可能な開発や気候変動資金に関する政策の一貫性などをテーマとする研修プログラムを通じて、アジアのNGOの能力開発を支援している。2016年、JANICは持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップの活性化を目指すSDGs目標16と目標17に集中することを決定した。私たちのアジェンダは、民主主義、市民権、企業の社会正義を促進することだ。私たちはまた、これらの国々の開発を抑制する汚職にも取り組んでいる。私はカンボジアでの平和会議に参加し、そこで行われた議論に感動したことを覚えている。私たちにはこのような交流が必要だと思った。

仕事柄、アジア各地を訪れ、同じ目標を追い求める同志と連帯しているが、母国で何が起きているのかも常に把握しようと努めている。日本における人権意識の低下や市民社会スペースの縮小といった国内問題、そしてこれらの問題に対する明らかな行動不足と無関心に対する懸念の高まりは、これらの課題に取り組む手助けをするという私の決意を奮い立たせた。

2018年、私はNANCiS(JANICも構成団体である市民社会スペースNGOアクションネットワーク)を立ち上げ、国内の人権侵害に対する関心の欠如に対処することにした。NANCiSは、沖縄に駐留する米軍施設が民間人にもたらすリスクなど、多様な問題に注意を喚起している。

また、国家による情報統制にもスポットライトを当てている。例えば、公式文書を要求する活動家が、大部分を墨消しされた文書を受け取ることがある。

私たちのアドボカシーの一環は、高価なインフラの建設に比べ、市民社会スペースに平等に資金を提供することを求めることである。私たちはまた、資金援助や会員数の不足に悩む日本の非営利団体についても懸念している。

労働問題は消費者の権利というレンズを通して見られている。オンライン・ハラスメント、特に自分たちの権利のために立ち上がる女性に対するものが横行しているが、醜悪である。

このような人々の意識の低さは、日本人の平均的なライフスタイルに起因していると私は考えている。人々は日常的な問題に対処するのに精一杯で、抗議行動に時間を割くことができない。その結果、政府は無抵抗のまま法律を通すことができる。例として、日本の防衛予算の拡大を見てみよう。昨年、日本政府が防衛予算の増額を決定したことで、メディアの世論調査では半数以上が防衛予算に難色を示し、物議を醸した。しかし、抗議運動は弱く、散発的なものだった。

政府と市民社会組織の対話が、真の意味での大改革を目指すのではなく、形式的な交流にとどまることが多いのは残念だ。

このような課題を考える一方で、日本には変化を求めて団結した若者たちがいることを知り、勇気づけられた。そのようなグループのひとつが、若者主導の「Fridays For Future Japan」である。ジェンダー平等やLGBTQの権利のための闘いも、多様性を受け入れる地方自治体が増えるにつれて前進している。

そして、国内的にも世界的にも民主主義を支援するためにさらなる努力が必要であることは間違いない。