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2024年07月08日(月)

【参加報告】Civil20中間会合(2024.7.1-2)

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お知らせ

提言

堀内葵

(写真:Maicon Douglas Fotografia

2024年7月1日(月)・2日(火)にブラジル・リオデジャネイロで開催された「Civil20中間会合(Civil20 Midterm Meeting)」に参加しました。20か国・地域の首脳や大臣が集まってさまざまな課題について議論するG20サミットは、今年、ブラジル政府が議長国を務め、2023年12月から多数の会議が開催されています。

日本政府は2019年に議長国を務め、6月に大阪で首脳会合が開催されました。このとき、国内外の市民社会による政策提言をコーディネイトし、G20側と対話を行ったのが公式エンゲージメントグループの一つであるCivil20(C20)です。JANICは、日本の市民社会による活動を促進するために、SDGs市民社会ネットワークとともに「2019年G20サミット市民社会プラットフォーム」の共同事務局を務め、C20の運営も担当しました。

本会合では、今年の議長国期間の半分が経過した時点で、C20としての政策提言について議論し、11月に開催される首脳会合に向けて議題を設定する役割を担うG20サブシェルパとの対話も行われました。

今年のC20はブラジルのAbongGESTOSという二つの市民社会ネットワークが共同で運営しています。中間会合にはブラジルの市民社会を中心に、最大300名の参加があり、過去のC20サミットに参加していたアルゼンチン、ボリビア、インドネシアなどからの参加者とも交流することができました。

初日には、公正な経済、食料、気候変動、国際保健、ジェンダー平等、デジタル化、平和・市民社会スペース(SDG16)など、10のワーキンググループによる政策提言書について詳細な議論が交わされ、以下のテーマ別セッションが開催されました。

  • 公正で包括的、そして反人種主義的な経済
  • 飢餓、貧困、気候変動の緊急事態の根絶
  • 民主主義、司法へのアクセス、市民社会スペース

 

各セッション様子はポルトガル語および英語で配信されました。以下は英語チャンネルのURLです。
https://www.youtube.com/watch?v=QvNvyuw8Bz0

二日目にはブラジルのG20サブシェルパを務めるフェリペ・ヒース氏と、外務省の市民社会参画および多様性アドバイザーを務めるのファブリシオ・プラド氏が登壇し、2時間にわたって市民社会とともに議論を繰り広げました。

(左から)エンリキ・フロタ氏(C20議長)、ファブリシオ・ブラド氏(ブラジル外務省)、アレッサンドラ・ニロ氏(C20シェルパ)、フェリペ・ヒース氏(G20サブシェルパ)

(写真:Maicon Douglas Fotografia

(写真:Maicon Douglas Fotografia

C20ブラジルのシェルパを務めるアレッサンドラ・ニロ氏は、G20プロセスにおける市民社会の連携と参画の重要性を強調し、「市民社会がG20に対するアドボカシーにしっかりと連携し、参画することが重要であり、10のワーキンググループが提言としてまとめた成果を示すことが重要です」と話しました。

(写真:Maicon Douglas Fotografia

ブラジル政府はより公正な社会をつくるために「富裕層への課税」を推進しており、今年のG20首脳会合で合意できるかどうかが注目されています。ただし、いくつかの国が強硬に反対しておりなかなか合意に至るのは難しいとの見通しもありますが、来年の議長国である南アフリカ共和国でも継続して取り組まれるようです。

C20の会議全体として多様性への配慮が行き届いており、ポルトガル語と英語の同時通訳、手話通訳に加え、アフリカにルーツを持つ人々や女性、小農民など、さまざまな脆弱性を持つ人々からの発言も多くありました。手話通訳の利用者のために、自分の服装を説明してから話し始めるなど、運営面でも工夫されていました。

(写真:Maicon Douglas Fotografia

今年のC20には、91カ国から2,000を超える市民社会組織が参加しています。C20中間会合は、すべての人々にとってより公正で公平かつ持続可能な未来を築く上で、市民社会が積極的に参加することの重要性を再確認するものとなりました。

中間会合の終了後、第3回G20シェルパ会合に対してC20による提言が発表されました。

「世界の市民社会組織と運動は、私たちの存在と地球を脅かし、ますます深刻化する複合危機(ポリクライシス)への深い懸念を表明する。G20は、長い間、経済危機への対処を試みてきたが、効果的な経済システム上のリスクの解決には失敗し、持続不可能で搾取的かつ排他的な生産・消費モデルを助長してきた。ロシアのウクライナ戦争やパレスチナで続く大量虐殺のように、戦争を防止し終結させることもできず、ハイチのように国が最も必要としているときに支援することもできなかった。しかし、貧困や飢餓の増加、ジェンダーに基づく暴力、市民社会スペースの縮小など、世界的な課題が深刻化しているにもかかわらず、解決策はある。従って、私たちはG20に対し、以下の提言を早急に実施することを求めます」という前文から始まるC20による提言書には、以下の20項目が含まれています(一部表現を簡略化)。

  1. 民主主義・世俗主義・人権を守ること
  2. 根拠に基づく公共政策を推進すること
  3. 一人当たりGDP指数を社会・経済・気候を考慮した新しい指数に置き換えること
  4. 化石燃料からの撤退と、より野心的な気候変動緩和・適応策を含む、公正な移行計画を早急に実施すること
  5. 累進的で公正なグローバル税制を推進すること
  6. 国際金融機関と多国間開発銀行を改革すること
  7. 債務負担とそのコストを削減すること
  8. 適正な雇用、社会保障、保健医療への普遍的なアクセスを確保することにより、貧困と飢餓を根絶すること
  9. 人権に基づくアプローチに教育を再編成すること
  10. 意思決定とデジタル公共インフラのためのテクノロジーの開発と利用について、公的な審議、透明性、説明責任、強制力を確保すること
  11. 多国間および国内の経済・社会・環境機関のガバナンスにおいて、多様な女性の平等な代表を確保すること
  12. 労働者の権利と安全を保護し、搾取を根絶し、多国籍企業と民間部門に責任を負わせること
  13. 無報酬の介護労働の貢献度を正確に測定し、女性と少女が担う割合の不均衡を是正すること、
  14. 環境衛生の課題における公衆衛生の役割を高めて保健システムを強化すること
  15. パンデミックの予防・準備・対応を強化すること
  16. すべての人の性的権利とリプロダクティブ・ライツを保障し、特に多様な女性と少女、LGBTQIA+の人々のために、アクセス可能で安価な医療サービス提供すること
  17. 司法へのアクセスを強化し、不当な扱いを受けている人々や脆弱な状況にある人々に対する説明責任と救済を保障すること
  18. 市民社会組織と運動のための法的保障を強化すること
  19. 軍事費と兵器生産を削減すること
  20. 持続可能な開発を促進し、コミュニティが利用しやすく、コミュニティのニーズに適応した資源を動員するために、フィランソロピー、特にコミュニティ・フィランソロピーが触媒的な役割を果たすことを認識し、支援すること
  21. 政府および市民社会が気候変動対策とSDGsへの資金拠出を加速させ、緑の基金、気候適応基金、損失・損害基金、世界基金などの既存のプラットフォームやメカニズムの効率を最大化し、少なくとも途上国へのODAの0.7%の拠出を達成することができるよう、革新的な資金調達メカニズムによるものを含め、追加的かつ予測可能な資金を創出すること

 

第3回G20シェルパ会合に向けたC20提言書の全文はこちらをご参照ください。

https://c20brasil.org/wp-content/uploads/2024/07/Civil20-Brazil-2024_Communique_EN_july_final.docx.pdf

執筆者プロフィール

堀内葵