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2024年07月26日(金)

VANI報告書『持続可能な未来に向けた変革の推進:ブラジルC20に向けて、インドにおけるC20の取り組みからの教訓』

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堀内葵

JANICのパートナー団体の一つであるボランタリー・アクション・ネットワーク・インド(Voluntary Action Network India / VANI)は、『持続可能な未来に向けた変革の推進:ブラジルC20に向けて、インドにおけるC20の取り組みからの教訓』(Driving Change for a Sustainable Future: Lessons from C20 Efforts in India for C20 Brazil)と題した報告書を2024年6月に発表しました。要旨部分を翻訳し、ご紹介します。

 


 

“Driving Change for a Sustainable Future: Lessons from C20 Efforts in India for C20 Brazil”

Author: Voluntary Action Network India (VANI)

June 2024

Copyright (c) Voluntary Action Network India
The content of this book can be reproduced in whole or in parts with due acknowledgement to the publisher.

Published by:

Voluntary Action Network India (VANI) VANI HOUSE, 7, PSP Pocket, Sector-8, Dwarka, New Delhi 110 077 Phone: 91- 11 – 49148610, 40391661 E-mail: info@vaniindia.org

Website: www.vaniindia.org


『持続可能な未来に向けた変革の推進:ブラジルC20に向けて、インドにおけるC20の取り組みからの教訓』

発行時期:2024年6月
著者:ボランタリー・アクション・ネットワーク・インド(Voluntary Action Network India / VANI)

要旨:

1990年代後半の世界経済危機を管理するために、イタリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、英国、EUの7カ国からなるG7は、解決策を見出すために新興国を関与させる必要性に気づいた。第二に、グローバル・サウス諸国は、IMF、世界銀行、WTOの有効性と民主化を提起し始めた。第三に、国連システムの役割が低下していることも、G20の結成につながったと考えられている。そこで1999年9月26日、財務大臣会合においてG20が結成された。G20の主要な役割は世界経済のガバナンスであると認識されていたため、当初は財務大臣と中央銀行総裁のみが参加したが、徐々にその範囲は拡大した。この進展は、今日の相互接続された世界では、解決策も国も単独では機能しないという事実にも基づいている。G20とともに、エンゲージメント・グループの数も増加した。エンゲージメント・グループは、まさに2つの機能を持つ。1つは、そのグループを構成する人々の声を明確にすること、もう1つは、グローバルな開発の課題について各国首脳に助言を与えることである。G20に加わった国々は、新興経済国だけではなく、世界の主要市場を代表している。中国、ロシア、ブラジル、インド、インドネシア、韓国である。現在、G20は世界の経済・政治対話の形成に重要な役割を果たす、主要経済国による著名な国際フォーラムと見なされている。

2013年まで、世界の市民社会はG20サミットにメディア・エンゲージメント・グループとして参加していた。したがって、その声や存在が記録されることはなかった。2011年、フランスの大統領は、サミット前の協議のために、選ばれたCSOのリーダーたちを招いたが、市民社会の声はすべてのステークホルダーの中で最も弱かった。C20が正式に創設されたのは、2013年のロシア議長国の時代であった。C20は、世界的に適切な開発課題を提起することに重点を置くだけでなく、そうでなければ欠けていたであろうグローバル・サウス(南半球)の声を上げることにも重点を置いた。

C20は、環境保護、社会的・経済的進歩、人権に焦点を当て、国連の持続可能な開発目標に沿った包括的で公平な開発を提唱している。C20が取り組む主な課題には、不平等、気候変動対策、貧困、教育、保健、平和構築、ガバナンス、人権などがある。このグループは、市民社会の懸念を増幅し、政府に説明責任を負わせ、複雑な問題について専門家の見識を提供することにより、より公正で公平かつ持続可能な世界を創造するよう努めている。

2019年、日本が議長を務めた時期のC20は、C20を組織するための固定的な構造と手順の最終決定に取り組んだ。G20は恒久的な組織や事務局を持たない。議長国が変われば優先分野も変わる。各国政府やその他のエンゲージメント・グループは円滑に機能することができたが、C20は制度的な記憶というギャップを抱えていた。そこで2019年、国際諮問グループ、国際運営委員会、シェルパ、トロイカ・システムの仕組みが作られた(訳註:実際には2018年のアルゼンチンC20の際にはこれらの仕組みが整備されていた)。実は、これらの仕組みはG20のものをミラーリングしたものである。

サウジアラビアの議長国就任当初、COVIDは大流行として世界を巻き込み、その後、サウジアラビアのC20(2020年)だけでなく、イタリアのC20(2021年)さえもオンラインで実施された。長い空白の後、インドネシアがG20とC20の物理的プロセスを開始した。

インドG20議長国

インドはG20の創設メンバーの一人であり、グローバル・サウス(南半球)の重要な代弁者でもある。実際、インドが最後に開催した主要サミットは、1983年の非同盟運動(NAM)だった。最後のサミットはもちろんBRICSであったが、それはG20のような世界各国からなる大規模な首脳会議ではなかった。インドでは、この大きなイベントの開催に高い熱意があった。インド政府は、尊敬すべき首相のリーダーシップの下、インドの歴史、文化、進歩を紹介する機会として、より包括的で壮大な規模で開催することを決定した。外務省に特別事務局が設置され、1年間のプロセスを調整した。インド全土で200以上のイベントが計画された。

C20インド

インドは、最も活発な市民社会が存在する国として知られており、国の成長と繁栄に貢献しているだけでなく、その革新と知識を通じて、世界のCSO運動の強化にも貢献している。VANIはインド市民社会の全国的なプラットフォームであり、動員や関与のためのテーマ別グループの組織化を始めた。我々は皆、議長国が交代しても、保健、教育、開発資金、気候正義など、中核となる問題は常に変わらないことを知っている。同時に、VANIはインドのG20事務局に対して、手続きやシステムを理解するための技術的なサポートを提供した。インドのCSOは、政府がイメージしている規模や資金力に大きな隔たりがあるようだった。1,000近くの会合が開催され、184万人が参加した。この規模を管理するために、事務局によって各エンゲージメント・グループのサブグループが作られた。インドC20の議長にはMata Amritanandmaiが、事務局にはRambhau Mhalgi Promodiniが指名された。持続可能性とレジリエント・コミュニティ、教育とデジタルトランスフォーメーション、統合的でホリスティックな保健、技術的安全保障と透明性、ジェンダー、平等と女性のエンパワーメントなどのテーマ別グループがある。VANIは、他のCSOとともに、このプロセスに技術的支援と動員支援を提供した。インドのC20は、インドの草の根グループとグローバル・サウスのCSOの関与という2つの柱を基本としていた。インドC20は、14 の主要なワーキンググループに焦点を当て、広範な世界的課題をカバーした。2023年のインド政府によるG20議長国就任に際しては、市民社会からの顕著な参加が見られ、10万人以上の人々が様々なイベントに参加した。C20は1,000以上の会議を開催し、主に南半球からの18万4,000人以上の参加者と関わった。インドのC20プロセスは、2023年7月29日から31日にかけてジャイプールで集大成を迎えた。C20事務局が主催したほぼすべてのイベントには、インド政府や各州の高官が出席した。

C20ブラジル

2024年にブラジル政府がG20議長国を引き継ぐにあたり、C20の活動の継続性を確保することは、差し迫ったグローバルな開発課題に取り組む上で極めて重要である。この研究プロジェクトは、インドのC20提言を分析し、ブラジルのC20アジェンダとの関連性を探ることで、主要なテーマ分野における収斂と乖離の領域を特定することを目的としている。文献レビュー、文書分析、インタビュー、比較分析を含む混合法のアプローチを活用することで、本研究は、インドのC20提言とブラジルのC20アジェンダとの関連性を探ることを目的とする。比較分析を含む混合法アプローチを用いることで、本研究は、インド・ブラジル間の優先事項の一致と、グローバルな課題への取り組みにおける潜在的な協力分野についての貴重な洞察を提供するものである。このことは、インドネシア、インド、ブラジル、そしてブラジルと、4つのグローバル・サウス諸国が連続して議長を務めるため、より重要である。C20の公式会合や廊下での立ち話では、グローバル・サウスについて十分な議論が行われていることが期待される。私たちは、グローバル・サウス諸国の関与が希薄な今日、これは市民社会間の協力の場となりうると信じている。VANIは、G20の対話とコミットメントを、イベント・ベースのアプローチにとどまらないものにすることを常に主張してきた。本調査が、G20が開催されるたびに、議長国による報告書が作成され、継続性のためのデータが提供されるというプロセスを開始するきっかけになればと願っている。

本報告書は4つのセクションに分かれている。第1章では、G20とC20のエンゲージメント・グループの起源と変遷を明らかにする。このセクションでは、市民社会の声を増幅させるという C20の中心的な役割に焦点を当て、インドのC20と、それがG20の議長国として果たした役割に焦点を当てる。次のセクションでは、ブラジルのC20アジェンダとの整合性や、調査のために採用された方法論に特に焦点を当てながら、インドC20サミットの提言の詳細な分析に焦点を当て、研究目的を掘り下げていく。第3章では、ブラジルC20サミットのアジェンダとインド市民社会の提言との整合性に焦点を当てながら、C20の枠組みの下で形成された提言と作業部会を包括的に分析する。持続可能な開発目標に沿うよう、人権、労働権、労働者保護、有害なサプライ・チェーンに取り組むことの重要性を強調している。さらに、グローバルな協力の必要性、協力のための具体的なメカニズム、そして人権の推進における説明責任を強調している。また、このセクションでは、人権の実施における文化的背景、人権の侵害と保護におけるテクノロジーの役割、伝統的な芸術、工芸品、文化の保護と保全についても強調している。

さらに、インドC20におけるワーキンググループの提言は、テクノロジー、セキュリティ、透明性、非正規労働者の社会保障、公共雇用におけるスキルアップ、包括的なデジタル・アクセシビリティに焦点を当てている。また、「スマート」都市計画の中で、障害者の富の不平等、手頃な価格の住宅、デジタル・アクセシビリティに対処するための戦略をより明確に示す必要性についても提言している。また、LGBTQIA+や先住民族の権利を認め、民主主義と人権を促進することの重要性も強調している。

さらに、総合的で全人的な健康、ジェンダー平等、持続可能な生活、フィランソロピー、ボランティア活動、責任あるテクノロジー利用への提言も強調している。また、包括的な意思決定、公平性のモニタリング、高等教育の質とアクセシビリティ、節度のある消費、責任ある廃棄、自然に基づく解決策、循環型経済、賢明な水利用などの必要性も強調している。

要約すると、これらのワーキンググループの提言は、いくつかの持続可能な開発目標(SDGs)に合致しており、持続可能な開発を達成する上での包括性、公平性、責任あるガバナンスの重要性を強調している。市民社会の声を高め、G20の枠組みの中で変革的な政策を提唱する上で、C20の役割は極めて重要である。

本報告書の最後のセクションは、結論と提言であり、インドとブラジルのC20アジェンダが、 グローバルな課題に取り組み、包摂的な持続可能な開発を促進するという共通のコミットメントを示していることを強調している。両者とも、持続可能なコミュニティ、ジェンダー平等、テクノロジー、国連の持続可能な開発目標との整合性を優先付けしている。インドのC20が14のワーキンググループに焦点を当てているのに対し、ブラジルは10のワーキンググループに加え、ジェンダー平等と人権に重点を置いた分野横断的なグループを設けている。全体として、インドとブラジルのC20イニシアティブの協力は、有意義な変化を促し、差し迫ったグローバルな問題に取り組む機会を提示している。

本報告書はまた、ブラジルのワーキンググループとインドの市民社会のワーキンググループとの間の協働を支援し、包摂性、貧困削減、飢餓根絶、持続可能な開発を中心に据えるための追加的な提言も行っている。

執筆者プロフィール

堀内葵