2023年12月26日(火)
【HAPIC2023詳報②】企業とNGOの対話でつくる公正な未来
普及
JANICが主催する「HAPIC2023 課題解決の先へ。」が11月11日、東京都内で対面とオンラインのハイブリッドで開かれました。その中で、「Synergy Talks: 企業とNGOの対話でつくる公正な未来」と題し、「ビジネスと人権」について語り合ったセッションを詳報します。
JANIC/THINK Lobbyでは、コーポレート・ソーシャルジャスティス(CSJ)プロジェクトとして、「公正な社会の実現に向けた対話のための企業行動チェックリスト」を作成しています。このセッションでは、CSJプロジェクトリサーチャーの敦賀和外氏と、同プロジェクトコーディネーターの土井陽子氏が、冒頭でチェックリストの内容やその背景を説明しました。
チェックリストは、「人権」「環境・気候変動」「コンプライアンス・公正な事業慣行」のテーマに基づく10の行動領域について、自社の企業活動が公正な社会の実現に向けて行われているかどうかを確認する仕組みです。
続くセッションには、THINK Lobbyの若林秀樹所長=写真左、株式会社IHIの人事部DE&Iグループ主査である葉山木綿氏=写真中、「世界の医療団日本」事務局長の米良彰子氏=写真右=が登壇しました。
若林氏は、「企業にも、公正な社会の実現に向けてなすべきこと(人権デューデリジェンス)がある、という認識に基づいて、ビジネスと人権というテーマを考えたい。そこには企業の人権リスクマネジメントや社会的責任という視点もあるが、新しいビジネスチャンスも生まれるはず。そして、企業の責任だというだけでなく、私たち市民社会もそこで一緒に取り組んでいきたいと考えている」と、述べました。
CSJの企業行動チェックリストのパイロット評価に参加したIHIの葉山氏は、パイロット評価に参加した目的として、「専門性の高い市民社会の皆さんの視点と問題意識を、事業に反映すること」と、「企業とNGOが社会課題の解決という共通の目標を持つのであれば、当初から一緒に取り組んだほうが効率的だと考えた」と、話しました。
一方、米良氏はNGOの立場から、「企業にとってリスクだから、ビジネスと人権の課題に取り組むのではなく、よりよい社会づくりという積極的な理由で取り組んでほしい」と指摘しました。
チェックリストは、企業が自身の、課題に対する「現在地」を知り、様々な関係者と改善点を知るための「対話」を開始する入口です。セッションでは、企業側からチェックリストにある「10の行動領域」の重要性は十分に認識している、という姿勢が示される一方で、企業と市民社会との「対話」の難しさも指摘されました。
この点については、「単なる対話ではなく、そのあとも関与していく、変えていく行動が大事。そう考えると単年度では終わらない中長期にわたる取り組みを前提に対話を進めたいと考える時がある」、「企業と市民社会が、お互いに先入観を持たず、対等なパートナーとして問題意識を具体的に共有していくことが必要だ」などの考え方が示されました。