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2022年12月20日(火)

【ニュース】オンラインセミナー「『ビジネスと人権』とその先へー公正な社会の実現に向けて企業ができること」を開催

THINK lobby

国際協力NGOセンター(JANIC)と、そのアドボカシーを担う機関であるTHINK Lobbyは12月16日、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの後援で、セミナー「『ビジネスと人権』とその先へー公正な社会の実現に向けて企業ができること」をオンラインで開催しました。企業関係者、NGO関係者など多くの皆さんにご参加いただきました。

セミナーは、市民社会とビジネス・セクターとの対話を深め、公正な社会の実現に関する共通認識を育むことを目的に開かれました。4人のパネリストによる議論に加え、JANICとTHINK Lobbyが取り組んでいる「コーポレート・ソーシャル・ジャスティス(CSJ)プロジェクト」が紹介されました。

この日登壇したパネリストは、川廷昌弘氏 (グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン/SDGsタスクフォース・リーダー)、鬼丸昌也氏  (JANIC理事長、テラ・ルネッサンス理事<創業者>)、佐藤暁子氏  (UNDP ビジネスと人権リエゾンオフィサー、弁護士)、若林秀樹氏  (JANIC 理事、THINK Lobby 所長、GCNJ 理事)の4人。THINK Lobbyのリサーチャーで世界人権問題研究センター「ビジネスと人権」専任研究員の井上良子氏がファシリテーターを務めました。

議論の中で鬼丸氏は、「企業の中には、自社がありたい姿を実現しようとすれば、おのずと社会正義と向き合わなければならない、と考えている経営者もいる。経営者がそのように考えれば、そこに集う人たちにも伝わり、考えるようになる。企業をそんな教育機関と考えると、大きな機会があると思う」と、述べました。一方で川廷氏は、「経営者は皆、社会の公器として企業を作ったという信念は持っている。わかっていても実践できない、という場合にどうやってスイッチを入れるか、が大きな課題だ。そういう意味では、法制度のような『しばり』があったり、インセンティブがあるなら利用したりすることも重要だ」と、述べました。

市民社会と企業がどのように連携するか、という点については、「市民という言葉自体が、企業側から見た時に、まだ企業言語になっていない」という指摘があり、これに対しては「『言葉』が違うのだから、乗り越えるには多くの熱量が必要で、対話を重ねることが大切」「対話だけではなく、企業へのサポートを通して実践を重ねていくことで、お互いの話を聞こう、という信頼関係が醸成できるのではないか」との意見が出ました。

また、THINK Lobbyから、CSJプロジェクトのひとつとして、「ソーシャルジャスティス・セルフチェックリスト」を作成中であることが伝えられました。リサーチャーの敦賀和外氏は、「企業が、公正な社会の実現に向けて自社の取り組みがどんな状態にあるのかを自己点検するためのツールで、全部できているかどうかが重要なのではなく、『できていないところ』を自ら確認することが重要という考え方で作っている」と、説明しました。

これに対しては、「企業側の担当者に、チェックリストの本来の意味を正確に分かってもらう工夫が必要だ」という指摘がありました。THINK Lobbyの若林氏は、「チェックリストは、こちらから押し付けるものではなく、自らチェックを望む企業が、NGO等のステークホルダーと対話しながら進めてもいい。どこから始めるかということについては魔法はない。気が付いた人から始めてもらうことで輪が広がっていくことを期待する」との考えを示しました。またCSJプロジェクトにも参加している佐藤氏は、「企業には100点満点をとらなくてはいけない、という思いが強いが、どの企業においても課題は必ずある。また、企業内にも必ず社会課題に関係するアクターがいるので、その声を聴く場を設けることにつながる。セルフチェックをきっかけに、そんな動きが出ればいいなと思っている」と、述べました。

2時間に及ぶ議論では、様々な課題が浮き彫りになりました。若林氏は「企業が公正な社会の実現に取り組むことは、公器として課題を解決する責任があるということのほかに、ビジネスにとっても良い環境となったり、ビジネス機会を創出することにもつながったりするだろう。公正な社会の実現は政府がやるもの、という考え方を捨てて、企業も市民も社会の一員として共に取り組む新しいスタートにしたい」と、述べました。