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2023年11月21日(火)

【HAPIC2023詳報①】G7広島サミットを踏まえた市民社会のあるべき姿とは?

普及

THINK lobby

JANICが主催する「HAPIC2023 課題解決の先へ。」が11月11日、東京都内で対面とオンラインのハイブリッドで開かれました。その中で、今年5月の「G7広島サミット」に合わせて実施された「C7サミット」の課題や成果について語り合ったセッションを詳報します。

このセッションでは、「NGOのNext Step: G7広島サミット/Civil(市民社会組織)7サミットの課題分析とNGOの役割」と題して、NPO法人CWS Japanの小美野剛・事務局長、NPO法人ワールド・ビジョン・ジャパンの木内真理子事務局長、JANICアドボカシーオフィサーでTHINK Lobbyの堀内葵・副所長が、C7サミットから見えたNGOの役割や将来進むべき方向性などについて話し合いました。

セッションに先立ち、外務省国際協力局民間援助連携室の工藤博・首席事務官があいさつに立ち、「C7のプロセスでは、外務省と市民社会が緊密に連携してきた。外交青書にも、市民社会とのもう一つの連携ということでコラムの形で取り上げる予定だ。改定された開発協力大綱でも市民社会は戦略的パートナーと位置づけられており、NGOとの連携は一層密になることが期待される」と、述べました。

東京で今年4月13、14日に開かれた「C7サミット」では、その前日に、首相官邸で「C7コミュニケ(政策提言書)」をG7議長である岸田文雄首相に手渡し、G7首脳コミュニケへの反映と、市民社会の提言内容の実現を要請しました。

堀内氏は「市民社会からの提言が、G7首脳会合にどれだけ反映されたかを分析しているが、ほとんど反映されていないと感じた。市民社会の声を届けるという意味ではまだ力が及ばなかった」と、率直な感想を述べました=写真。そして、「G7が日本で開かれる時だけ、アドボカシーに取り組むという動き方だけで良いのか」と、話しました。


一方で堀内氏は、政府とのパートナーシップは、前回G7が日本で開かれた7年前に比べて「かなり強化されたと思う。経済的支援を含めて、C7のプロセスには様々な支援を外務省からいただいた。G7サミットの一部としてさまざまなステークホルダーの声を反映させようとする姿勢を感じた」と、述べました。
C7には、G7以外の国を含め、75カ国の700名以上が携わって政策提言を作成しました。この点は「C7プロセスの大きな特徴」としながらも、堀内氏は「それぞれがどのぐらいオーナーシップをもって取り組んだのか、という点では疑問が残る」と、指摘しました。

木内氏は、政策提言書がG7サミットでの議論にどれだけ反映されたかについて、「課題認識と論理において共有できている部分は増えていると思うが、それをどう実践していくかについて、具体的なコミットメントがない。市民社会組織は、課題認識を持つだけでなく、どう実践するか、資金や人材をどのように持つか、といったことを各ステークホルダーと話し合えるまで成熟していると思う」と、述べました=写真

小美野氏は、日本のNGO観がどのように変わってきたか、という点について、「日本のNGOセクターは過渡期にある」と、指摘しました。「東日本大震災の時に比べると成長したが、今後の成長を考えるうえで重要な点がある。それは、日本国内のNGOセクターの予算獲得競争が激化していることだ。国内の『パイ』を大きくする努力も必要だが、グローバルな競争に日本のNGOも出ていくべきだと思う。ただ、グローバルでリーダーシップをとれているNGOは少ない」と、述べました=写真


小美野氏は、日本人が世界で活躍するために必要なこととして、「ビジョンが明確であること。そのビジョンをみんなに見せることができるコミュニケーション力。先見性が高く、適切な投資先を見極める勇気と能力があること」を挙げました。

日本のNGOが目指すべき方向性について小美野氏はさらに、「テーマ別のプロフェッショナリズムを磨くプラットフォームになれるかどうかが重要だ」と、指摘しました。木内氏は、「組織の基盤強化が重要。お金、人、組織。そこがしっかりしないと、リーダーシップも生まれない。組織力を持ったNGOが増えることが大切だ」と、述べ、堀内氏は「キーワードはパートナーシップだ。戦略的なパートナーをそれぞれの団体が自身の分野で見つけることで、活動がより広がり、強化される」と、述べました。

セッションの最後は、参加者が数名のグループになり、「NGOとしてこうありたいと思う姿」や「これから強化したいと思う資質」について意見交換をしました。短時間ではありましたが、会場では活発な意見が交わされていました。